桃は中国原産だが、弥生時代に日本に渡来した。晩春に、五弁一重の淡江の花を咲かせる。桃の花には、桃源郷の説話があるように、長閑な理想郷のイメージがあり、また、雛祭の花でもある。
掲句は、行きずりの山家から赤ん坊の泣き声が洩れてきたという。日頃は静かな山辺に、生まれて間もない嬰(やや)の泣き声が響き渡る。折から、桃の花が、赤子の誕生を祝福するかのように咲き盛っている。旧暦で祝う桃の節句の頃の明るさと華やぎがあろう。『俳句』2023年6月号。
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