闇へみな戻りて行きぬ花今宵 片山由美子

俳句で「花」といえば桜の花のことだが、「花」と桜は同じではなく、桜より豊かな広がりを持つ。雪月花の雪や月と同様、日本人の風雅の心の根幹を形作るものだ。

掲句は、宴や舞台が果てた後の静寂が感じられる作品。「月今宵」は仲秋の満月の夜のことだが、「花今宵」にも、満開となった桜を夜になっても愛でる花時特有の気分があろう。闇へ戻っていくのは、宴に集まった人たちであり、舞台で演じた役者や観客であり、また、花の精でもある。やや抽象的な句柄ながら、爛漫と咲き盛る花が夜目にも見えるようだ。『俳句』2023年6月号。


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