春キャベツ刻みさしあたり幸せ 山尾玉藻

単に「キャベツ」といえば、初夏の季語(「甘藍」の傍題)であり、春のうちに出回る走りのキャベツは「春キャベツ」として区別する。他の季節のキャベツに比べて、みずみずしい黄緑色をしており、柔らかく、葉の巻きがゆるいのが特徴だ。

掲句には、春キャベツを刻みながら、ふと立ち止まって自らの日常を振り返っている趣があろう。「さしあたり」は、先のことは兎も角、今現在は幸せな日々を送れているとの意味合い。今の時間を大切に、丁寧に生きている女性の心情である。中七以下は破調だが、野球でいえば、緩急自在の投球を思わせる。『俳句』2023年5月号。


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