イヤホンの中の爆音冴返る  藤井あかり

「冴返る」は、立春を過ぎてようやく春めいてきている中で、再びぶり返す寒気のこと。「余寒」「春寒」も同様の意味合いの初春の季語だが、「冴返る」は、より感覚的に捉えた春先の寒さだ。

掲句は、春先の寒さを聴覚をとおして捉えた。状況の説明や、目に映る映像等を一切省略し、「イヤホンの中の爆音」という耳に届いた音に焦点を絞ったことにより、印象が鮮明になった。ラジオで聴いているニュースの中で響いた爆音だろうか、とすれば、無辜の人々を殺傷する兵器の発する爆音か、それとも・・・などと一読想像がひろがる。いずれにせよ、この句の「爆音」には、平穏な生活を乱す不穏なひびきがあろう。『俳句』2023年5月号より。


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