乳を吸ふ子の口熱し花の雨  日下野由季

「花の雨」は、桜の咲いている頃に降る雨。眼前に桜が咲いているかどうかは問わない。桜の咲く頃は周期的に天気が崩れ、折角の花を散らしてしまうことも多い。夜半、音を立てて降る雨に目覚めて、今年の桜も終わりだなと、残念に思いながら再び眠りにつくこともある。

掲句は、子に乳を含ませる母としての実感を詠んだ作品。授乳の経験がなければ詠みえない一句だろう。乳を欲る子の口の熱さは、溌溂たる命の証でもある。折からの「花の雨」は、母子を明るくやさしく包み込む。『俳句』2023年5月号より。


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