風といふ清流に棲む鯉のぼり 河野薫

「鯉のぼり」は、端午の節句に男の子の健やかな成長を願って庭先などに立てる飾り。最近は、民家の庭に鯉のぼりが揚がる姿を見ることは少なく、ベランダや室内に飾る小型のものが増えている。

掲句は、屋外に立てた鯉のぼりがよき風を得て、気持ちよさそうに靡いている情景。若葉や青草の匂いを含んだ五月の清々しい風の中の鯉のぼりを、「清流に棲む」と表現したところがいい。鯉の形を模した命なきものに生命を吹き込む卓抜な措辞だ。黄河の急流にある滝を多くの魚が登ろうと試みたが鯉のみが登り切り、竜になることができたとの中国の故事を思い起こしてもいいだろう。『俳句』2023年5月号より。


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