菜の花が一面に咲くのは晩春の頃。その明るさの中にいると、老病死などの人の世の幾多の苦しみが、霧消するような錯覚を覚える。
掲句は、大切な人の逝去を悼み、その生誕から死までの「一生(ひとよ)」を追想しての作品。死は生の終着点であり帰結だが、逆に、「棺を蓋いて事定まる」との諺があるように、死が、その人の「一生」を改めて照らし出すということも、紛れない真実だろう。「花菜風」の明るさの中で、作者の故人に対する追想は、どこまでも明るく広がっていく。『俳句』2023年5月号より。
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