俎板を傾けて干す夏隣  笹瀬節子

4月も下旬になると、日差しや風、水のきらめき、庭園や野の花々、道を歩く人の服装、青果や鮮魚の売り場など、見るもの聞くものにつけ、夏の近づいてくることを実感することが多くなる。

掲句は、簡明な即物具象の作品。一読、〈春暁の竹筒にある筆二本 龍太〉を思い浮かべた。動きがあるとすれば、戸外に干してある俎板に、木漏れ日がゆらゆらと揺れていること位だろうか。いずれにしても、下五の「夏隣」は盤石の据わりだ。本格的な夏の到来を前にした静かさが辺りを支配している。「俎板」という素材に、生活者としての作者の日常が覗いている。『俳壇』5月号。


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