かげろへるかたちそのまま火焔土器

「陽炎」(かげろう)は、麗らかな春の日差しの中で、野中のもののかたちが揺らいで見える現象。空気の層によって温度差が生じ、光が屈折することから、人の目にものが揺らいで見えるのだ。陽春の気分をたっぷり含む季語だが、人の知覚の不確かさ、ひいてはこの世に存在するものの不確かさを暗示する言葉でもある。

掲句は、とある博物館で展示されていた火焔型土器のレプリカを見ていてできた作品。火焔型土器は、縄文土器の一種で、 燃え上がる炎を象ったかのような形状の土器。外光の差し込まない博物館の一室にいて、ガラスケースの中に置かれたその土器を前にして、ふと戸外の麗らかな日差しを思い浮かべ、そのような日差しの中で煮炊きしている縄文人たちを想像した。平成28年作。

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