「飛花」「落花」「花吹雪(はなふぶき)」などは、桜の散り際を愛でる日本人の美意識が感じられる言葉だ。惜し気もなく散り急ぐ桜吹雪の中にいて、その美しさに茫然としながら、今年の桜も見納めだと思い、止まることのない月日の流れを感じ取る。
掲句は、「飛花落花」の中に佇む作者の幻想だろう。「漉き込む」は、紙に文字や模様が現れるように普通の原料以外の、例えば木の葉や花びらなどを混ぜて漉くこと。「飛花落花」の中にいて、それらの花びらと一緒に自身も漉き込まれてゆく錯覚を覚えたのだ。自他の境界が曖昧になるような忘我の境地が詠まれている。『俳壇』2023年4月号より。