白梅に大屋根に父帰り来し  廣瀬悦哉

春先に咲く白梅の白さは、厳密にいえば純白というのではないが、この世の汚れと無縁であるかのようなその眩い白さには、年々心を洗われる思いがする。長い廊下の先に明るい窓があるように、長い冬を経て、春がやってくる。梅は、人に、真っ先に春の到来を告げる景物の一つ。

掲句は、作者の父廣瀬直人の逝去(平成30年3月1日)に際しての作品。句集『里山』には、「父死す 五句」との前書きが付された諸作の冒頭に収められている。長い闘病生活を経て、亡き父の魂は、生前愛でた白梅のもとに、また、日々暮らした大屋根の下に帰ってきた。「帰り来し」との措辞に、〈おかえりなさい〉と亡き父を労う万感の思いがこもる。平成30年作。


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