花虻ひとつ龍太忌の深空より

2月25日は、戦後の俳壇において森澄雄とともに伝統俳句の中心的存在として活躍した飯田龍太の忌日。依然として寒さは厳しいが、咲き始めた梅に、待ちに待った春の到来を実感する時季でもある。

昼休みに公園の梅を眺めていると、折りからの日差しに誘われたように花虻がどこからか現れて、疎らに咲いた白梅に纏わるように飛びはじめた。空は深々とした碧ひと色。龍太が〈白梅のあと紅梅の深空あり〉と詠んだあの「深空」(みそら)だ。「龍太忌の深空」との措辞は、そのとき即座に思い浮かんだのだった。平成28年作。

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