囀に合わせ歩幅をゆるめたり 宇多喜代子

春の繁殖期を迎えると、鳥たちは梢などで求愛の声を奏でる。四十雀などは、夜明けを待ちかねたように、二、三羽が、別々の梢で一斉に鳴き始める。彼らにとって、「囀(さえずり)」は、求愛であるとともに、縄張り宣言でもあるのだろう。冬の間は藪などにひそんで餌を漁っていた鳥たちが、人の目も怖れず、木の天辺に姿を現す。

掲句は、ゆったりとしたテンポの「囀り」に合わせて歩幅を緩めたという。作中で多くのことを語っている訳ではないが、自然とともにある日常や春が巡ってきた喜びを、無理のない言葉で、さり気なく、しかし、確かに語っている。『俳句』2023年4月号より。


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