今年も、町を出はずれると、雲雀の声が聞かれる季節になった。雲雀には、広々とした大きな空がよく似合う。と言っても、近年は、郊外を散歩していても、雲雀を見かけることは大分少なくなった。人間の活動が郊外の土地の隅々にまで及んで、雲雀の生息する余地が減ってしまったのだ。残念なことである。
掲句は、長野の野辺山高原での作品。標高1400メートル。雲雀の声に誘われて道路脇の牧場に踏み入ると、足の裏に応えてくる土の弾力に、春の到来を感じた。冬の間雪に覆われていた地面も顔を出して、たっぷりと日差しを浴びている。そろそろ農作業が始まる時季だ。廣瀬直人主宰が『白露』誌上で褒めてくれたことが今でも忘れられない。平成8年作。『河岸段丘』所収。