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俳句の庭

  • 送別や冷めて灯の浮く蓴(ぬなわ)汁

    4月 26th, 2023

    「蓴」(ぬなわ)、「蓴菜」(じゅんさい)は沼などの水面に葉を浮かべる水草の一種。 茎から出る新芽はゼリー状のぬめりで覆われており、吸い物や酢の物の食材となる(夏の季語)。

    掲句は、職場の送別会で、宴が闌けた頃の気分を作品にしたもの。思えば、長い職業生活の間には、数えきれないほどの歓迎会、送別会、懇親会等があったが、目の前の料理を味わって食べることは稀だった。職場の宴席などそんなものと割り切ってしまえばいいのだろうが、宴席が、職業人としての気遣いだけに終わってしまったことに、過ぎ去ってみて一抹の寂しさもなくはない。平成21年作。『春霙』所収。

  • 水木の花

    4月 26th, 2023

    ミズキ科の落葉高木で、山野に自生するが、庭園や街路に植えられることも多い。晩春から初夏にかけて、枝先に白い四弁の小花が密集して泡立つように咲く。この時季の山野や公園で目につく花の一つだ。樹液を吸い上げる力が強く、春先に幹や枝を切ると水がしたたるところから、この名がある。花木として知られるアメリカ産ハナミズキは別種。

  • 両神山のむらさきだちて梅ひらく

    4月 26th, 2023

    「梅」は、春になって、他の花に先駆けて咲く花の一つだ。枯れ枯れとした中に、一輪の梅が咲いたのを見出す喜びは、待ちに待った春の到来を喜ぶことに他ならない。

    掲句は、春先に秩父盆地から、西に屏風のようにひろがる山々を見わたしての一句。「両神山」(りょうかみ)は秩父連山の北端に位置する山で、日本百名山のひとつ。その日は、台形の形をした荒々しい山容が、雲一つない清々しい青空のもとで、紫がかって見えた。傍らの斜面では、梅が咲き始めていた。令和5年作。

  • 春雨

    4月 26th, 2023

    「春雨」と「春の雨」は、歳時記に別の季題としてたてられており、「春の雨」が、春に降る雨の総称であり、初春から晩春にかけての色々な降り方の雨を含むのに対し、「春雨」は、晩春の、小止みなく静かに降り続ける雨のことをいう。「春雨」に濡れながら、木々は葉を広げ、蕾は生き生きと雨を弾く。からからに乾いていた田圃も濡れて、蛙の声が遠近から聞こえてくる。ただ現代では、実作者としても、読み手としても、両者をそう峻別する必要はないだろう。

  • 彼岸寒鰓(あぎと)にとほす荒縄も

    4月 25th, 2023

    「彼岸」は、春分の日を中日として、その前後3日の計7日間を指す。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるが、実際は彼岸になってもそうスムーズに寒さが収まらないことは、〈毎年よ彼岸の入に寒いのは 子規〉の句にも表れている。

    掲句は、築地場外市場での嘱目。男たちが塩まみれになって、鮭の鰓から縄を通す作業をしていた。折りからの寒さの中で、生き物から食材へと変貌してゆく鮭の無残な印象が心に残った。平成19年作。『春霙』所収。

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