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俳句の庭

  • 春竜胆(はるりんどう)

    5月 3rd, 2023

    リンドウ科リンドウ属の多年草。日当たりのよい山地に生え、茎の先端に青紫色の漏斗状鐘形の花をつける。曇るとすぐ花を閉じてしまう。単に「竜胆」といえば、秋の季語。

    下の写真は、4月下旬に長野県内で撮影したもの。晴れわたった日、笹を刈った後の陽だまりに咲き始めていた。

  • イヤホンの中の爆音冴返る  藤井あかり

    5月 3rd, 2023

    「冴返る」は、立春を過ぎてようやく春めいてきている中で、再びぶり返す寒気のこと。「余寒」「春寒」も同様の意味合いの初春の季語だが、「冴返る」は、より感覚的に捉えた春先の寒さだ。

    掲句は、春先の寒さを聴覚をとおして捉えた。状況の説明や、目に映る映像等を一切省略し、「イヤホンの中の爆音」という耳に届いた音に焦点を絞ったことにより、印象が鮮明になった。ラジオで聴いているニュースの中で響いた爆音だろうか、とすれば、無辜の人々を殺傷する兵器の発する爆音か、それとも・・・などと一読想像がひろがる。いずれにせよ、この句の「爆音」には、平穏な生活を乱す不穏なひびきがあろう。『俳句』2023年5月号より。

  • 乳を吸ふ子の口熱し花の雨  日下野由季

    4月 29th, 2023

    「花の雨」は、桜の咲いている頃に降る雨。眼前に桜が咲いているかどうかは問わない。桜の咲く頃は周期的に天気が崩れ、折角の花を散らしてしまうことも多い。夜半、音を立てて降る雨に目覚めて、今年の桜も終わりだなと、残念に思いながら再び眠りにつくこともある。

    掲句は、子に乳を含ませる母としての実感を詠んだ作品。授乳の経験がなければ詠みえない一句だろう。乳を欲る子の口の熱さは、溌溂たる命の証でもある。折からの「花の雨」は、母子を明るくやさしく包み込む。『俳句』2023年5月号より。

  • 苜蓿(うまごやし)

    4月 28th, 2023

    マメ科の多年草でヨーロッパ原産。江戸時代に渡来し、野生化した。「しろつめくさ」は俗称。通常は三つ葉だが、稀に四つ葉のものがあると幸運をもたらすものとして珍重される。晩春に、白い鞠状の花を咲かせる。春たけなわの伸びやかな地の起伏や空間を感じさせる季語だ。

  • 風といふ清流に棲む鯉のぼり 河野薫

    4月 28th, 2023

    「鯉のぼり」は、端午の節句に男の子の健やかな成長を願って庭先などに立てる飾り。最近は、民家の庭に鯉のぼりが揚がる姿を見ることは少なく、ベランダや室内に飾る小型のものが増えている。

    掲句は、屋外に立てた鯉のぼりがよき風を得て、気持ちよさそうに靡いている情景。若葉や青草の匂いを含んだ五月の清々しい風の中の鯉のぼりを、「清流に棲む」と表現したところがいい。鯉の形を模した命なきものに生命を吹き込む卓抜な措辞だ。黄河の急流にある滝を多くの魚が登ろうと試みたが鯉のみが登り切り、竜になることができたとの中国の故事を思い起こしてもいいだろう。『俳句』2023年5月号より。

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