「紅枝垂れ(べにしだれ)」はエドヒガンの変種で、濃い紅色の花を大きな樹から滝が流れ落ちるように咲かせる。
掲句の「寂庵(じゃくあん)」は、2021年11月に逝去した瀬戸内寂聴が生前京都嵯峨野に開いたお寺であり自宅も兼ねた曼荼羅山寂庵のこと。かつて寂聴に親近した作者の追慕の思いが「天にふぶける」の措辞から感じられてくる。「天」は単なる空ではない。それは亡き寂聴の魂が棲む天上界である。今しも「紅しだれ」が吹雪いて、寂聴の魂を包み込むかのように、しきりに花びらを散らしているのだ。『俳壇』2023年4月号より。
なお、黒田杏子氏は、2023年3月13日に逝去された。

