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俳句の庭

  • 遅日光

    4月 17th, 2025

    「遅日(ちじつ)」は春の日(day)の日暮れが遅いことを表す時候の季語。実際には夏至が一番日暮れが遅いが、冬の日暮れが早いので、春の訪れとともに日暮れの遅さがひとしお印象深く感じられる。そして、その頃の中々沈まない太陽やその日差し(sun)を「遅日光(ちじつこう)」という。歳時記に独立の季語としては出ていないが、「遅日」の例句の中には、「遅日光」を用いた句も散見される。「薄暑光」「晩夏光」などと同様、時候等の季語と「光」を組み合わせた俳句特有の表現の一つ。四季折々の「光」に対する日本人の感性の細やかさが思われる。

  • 新樹光鳥影を追ふ声を追ふ 野木桃花

    4月 16th, 2025

    「新樹」は若葉におおわれる初夏の木立をいう。「新樹光」は「新樹」の若葉の照り返しのこと。周囲はみずみずしい明るさに満ちる。

    掲句は初夏の木々の光が、木々を訪れた鳥の姿やその声を追っていると詠む。鳥たちは木々を塒にしたり若芽を食べに訪れたりして、木々と関わり深く生活しているが、木々の方でも、そうした鳥たちに慈愛の眼差しを注いでいるのかも知れない。この句は「新樹光」を擬人化しているが、作者が鳥影やその声を追っているとも読める。どちらが正しいというのではない。どちらにも読める曖昧さが俳句表現の醍醐味。『俳壇』2025年5月号。

  • 牛蒡蒔く

    4月 16th, 2025

    秋に収穫する牛蒡(ごぼう)を春に蒔くこと。種まきの時期は3月下旬から4月で、収穫はその3、4カ月後になる。「牛蒡引く」「牛蒡掘る」は秋の季語。

  • 木苺の花

    4月 16th, 2025

    「木苺」は日本を含む温帯地方原産のバラ科の落葉小高木の総称。山野に自生し、モミジイチゴ、ナワシロイチゴ、カジイチゴ、バライチゴ等の種類がある。なお、ラズベリーやブラックベリー等は海外から導入された「木苺」の一種。葉や茎に刺があり、晩春の頃、梅花に似た白色、ときに紅色の五弁花を開く。夏に熟れる果実は食用になる。下の写真は林の中で見かけたバライチゴ(ミヤマイチゴ)で、「木苺」の一種。

  • 母遠しときどき近し春の星 伊藤政美

    4月 15th, 2025

    「春の星」は春の潤んだような夜空に仰がれる星のこと。冬星の鋭さとも異なり、その柔らかな光は暖かさを感じさせる。代表的な星座は大熊座・獅子座・蟹座・海蛇座・乙女座・牛飼座など。

    掲句は、春の星を仰ぎながら亡き母のことを追想しているのだろう。春の星の和やかな光が、胸裏に母の面影を呼び起こす。死とは遠くへ行ってしまうことであり、この世では二度と会うことはない。だが、胸中の母はいつも作者とともにある。「母遠しときどき近し」の措辞は、遠くて近い亡き人との距離感を過不足なく言い留めている。『俳壇』2025年5月号。

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