曼珠沙華人ごゑに影なかりけり 直人
「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」はヒガンバナ科の多年草。田の畦や土手、墓地などに赤い鮮やかな花を群れ咲かせる。彼岸花(ひがんばな)、死人花(しびとばな)、狐花(きつねばな)など別名も多い。
掲句は、秋のお彼岸の頃の墓参を思わせる作品。耳に入ってくる人声には、聞き覚えのある声も見知らぬ人の声もあるだろうが、それらの声から感受したことを「人ごゑに影なかりけり」と表現した。顔見知りの檀家さんたちと挨拶を交しながらの好天の墓参の光景が彷彿する。この句の「曼珠沙華」は不気味さ、妖しさよりも、人懐かしい雰囲気をまとっている。昭和58年作。『朝の川』所収。