春の夜の満月。冬の澄んだ月とは異なり、空気中の水分で潤み、ぼんやりと優しく、暖かみのあるオレンジ色に輝く。「春の月」の傍題。なお、今年(2026年)の3月は、3日の夜が満月だった。

春の夜の満月。冬の澄んだ月とは異なり、空気中の水分で潤み、ぼんやりと優しく、暖かみのあるオレンジ色に輝く。「春の月」の傍題。なお、今年(2026年)の3月は、3日の夜が満月だった。

3月3日の雛祭に飾る三人官女のこと。三人それぞれ持ち物(長柄銚子、加えの銚子、三方)を持ち、内裏雛(お内裏様とお雛様)の婚礼でお酒を注ぐ役割を担う。江戸時代後期以降、宮廷の婚礼の華やかさを再現するため、五人囃子などとともに雛人形に加えられた。「雛祭」の傍題。

「漱石忌」は、明治の文豪夏目漱石の忌日(12月9日)。本名は金之助。大学時代、子規と出会って俳句を学び、その後多くの俳句を作った。虚子の勧めで、『ホトトギス』に『吾輩は猫である』を発表したことが小説家に転ずる契機になった。
掲句は、漱石の忌日に、漱石の人となりや文業に思いを馳せての作品。漱石は、小説を通して、明治維新以降の日本人の心の拠り所を求め続けた作家だったと思っている。その志は「火の色」と形容するに相応しい。『郭公』の井上主宰には、「室咲きの花の色の強烈な赤は、夏目漱石という作家の印象と響き合っている。」と鑑賞していただいた。令和7年作。
一軒の藁家全き桃の花 直人
「桃の花」は桜に少し遅れて咲く、鄙びた美しさを持つ花。多くは実を収穫するための花であり、その華やかさとは別に、地域の生活に根ざしている花でもある。
掲句は藁家(わらや)の傍らに咲いている桃の花を詠む。藁家は藁で屋根を葺いた家のこと。藁葺きは、かつては農村でごく普通に見かける屋根だったが、高度成長期を経て姿を消していった。作者が見ているのは藁葺きの屋根が近隣から姿を消しつつある時期の一軒の藁家。「全き」との端的な一語に、古きよきもののもつ風格に惚れ惚れと目を注いでいる作者の姿が思われる。「桃の花」は、この句では、一軒の藁家のどっしりとした風格を引き立たせる役を果たしている。昭和55年作。『朝の川』所収。
床の一部を切り、炭や薪を焚いて暖房や煮炊きを行う設備のこと。11月頃の「炉開き」から冬の間暖をとるために使われる。伝統的民家の板の間や土間に設けられる「炉」は「囲炉裏」ともいい、一家団欒の場所ともなる。天井から自在鉤を吊るして鍋をかけ煮炊きなどもする。また、茶道では、夏(5月頃~10月頃)は「風炉(ふろ)」を使い、冬(11月頃~4月頃)は「炉」を使うのが基本になっている。
