蟇出て清冽な水に逢ふ 直人
「蟇穴を出づ」は単に「蟇出づ」ともいい、冬眠していたヒキガエルが暖かくなって土の中から出てくること。穴を出たヒキガエルは、雌を求めて低い声で鳴く。3月頃に見かけることが多い。
掲句は、穴から出てきたヒキガエルが清冽な水に逢ったと詠む。ヒキガエルが穴から出る頃、氷や雪が解けたばかりの水は冷たく澄んで手を切らんばかり。ヒキガエルと水の出会いを「会う」ではなく「逢う」と表現したのは、ヒキガエルと水の深い縁を作者が感じ取っていることによるだろう。穴を出たヒキガエルは、早速水に潜り、雌を求めて泳ぎ回る。昭和53年作。『朝の川』所収。


