冬の月如来の繊き指を想ふ

四季を通して月は見られるが、「冬の月」は寒さの中で仰ぐ月であり、その冴え冴えとした光には静かで研ぎ澄まされた美しさと荒涼たる寂寥感がある。

掲句は眼前に昇った「冬の月」を詠んだ作品。遮るもののないその冴え冴えとした月光の中で胸裏に浮かんだのが、かつて見た釈迦如来像や阿弥陀如来像の印を結んだ繊い指だった。人を差し招くような、また、拒むような如来の手の印象が、長い間私の心の中に残っていたものと見える。平成19年作。『春霙』所収。

,

コメントを残す