エーゲ海コス島原産のレタス。一般の玉レタスのように結球しない、リーフレタスの一種。硬い葉脈を持つ長細い丈夫な葉が半結球する。和名は立萵苣(たちちしゃ)。ローマ時代から食べられていたことが、その名の由来とされる。その後ヨーロッパからアメリカに広まった。玉萵苣(レタス)、葉萵苣(サニーレタス)、茎萵苣(ステムレタス)、掻き萵苣(カッティングレタス)などとともに、萵苣(レタス)の仲間。

トチノキの実。トチノキは、全国の低山渓流沿いに自生する落葉樹。「橡(とち)」は「栃」とも表記する。「橡」はブナ科コナラ属の落葉樹であるクヌギを指す古名でもあるが、トチノキを指す漢字としても使われる。一方、「栃」は主にトチノキを指すために日本で作られた国字。果実の丸く厚い殻の中には栗に似た種がある。縄文時代から食用にされ、今もトチモチなどにして食す。近縁種のセイヨウトチノキは果実の表面に刺がある。

シャモニー滞在中の一日、モンブラントラムウェイに乗車して、シャモニー渓谷の南方のモンブラン山群の中腹まで登った。モンブラントラムウェイは、フランスで最も標高の高い登山鉄道の一つで、シャモニー渓谷から山群の中腹まで登ることができる。終点のニ・デーグル駅はモンブラン登頂ルートの出発点。二両連結だが、駅員の誘導で、本格派のアルピニストたちと私たち観光客は、別々の車両に乗ることになった。

降りたのは終点から一つ手前のモンラシャ駅で、標高2117メートル。そこから一つ手前の駅ベルビューまで歩いた。かつては氷河におおわれていた山膚は、氷河に削られた岩々を荒々しく現わしていた。

トレッキングコースは、ときにはアマツバメの飛び回る中を、ときにはお花畑の中を辿って行った。竜胆やエーデルワイスなど沢山の高山植物を目にする中で、特に印象に残ったのは柳蘭(やなぎらん)。アカバナ科の多年草で、日当たりの良い山膚に群生する高山植物の一つ。直立した茎に葉が互生し、上部に花穂が出て濃いピンク色の花を咲かせる。日本の高原地帯で見かける柳蘭に比べてやや小ぶりだが、群がり咲くさまは見応えがあった。針峰(しんぽう)と呼ばれる鋭い山容と直立して咲きのぼる柳蘭の姿にはどこか似たところがあって、それらが相俟って、アルプスの景観を作り出していた。
ちなみに、針峰は氷河の侵食によってできた針状の鋭い岩峰のこと。そのような山々は、エギュイーユ・デュ・ドリュ、エギュイーユ・デュ・ミディなどエギュイーユ(針、aiguille)の語を冠して名づけられていることが多い。花崗(かこう)岩などの垂直に近い節理をもった岩塊に見られるという。

モンラシャからベルビューまでのコースの標高差は300メートルほど、距離は5キロメートルほどだったが、標高の高い辺りでは蕾がちだった柳蘭が、標高が低くなるにつれて花盛りになっていった。

フランスギクの群落も見かけた。キンポウゲに、放牧の牛が鳴らすカウベルが澄んだ音を立てた。太陽に照りつけられたがれ場を、蝶が横切っていった。

上の写真はベルビューの山小屋風の小さな駅舎。ここから私たちはモンブラントラムウェイに乗車して帰途に就いた。富士登山になぞらえて言えば、モンブランの五合目あたりでハイキングを楽しんでそのまま下山したようなものだろう。
地中海沿岸原産のキク科の耐寒性多年草。葉には白い繊毛が密生しているため、銀白色のシルバーリーフに見えるのが特徴。花よりも葉の美しさが鑑賞されることが多い。初夏に黄色の小さな花を咲かせる。「セネシオ・シネラリア」と呼ばれることもある。一部の歳時記には「シネラリア」(春季)の傍題として載っている。
