無月かな草抜き捨てし手がにほひ

「無月(むげつ)」は陰暦8月15日の名月の夜、空を覆う雲に月が隠れていること。待ちわびた月が隠れて見えないのは残念だが、そこに風情を見出すところに、日本人の美意識が垣間見える。

掲句は「無月」の夜、手に抜き捨てた草のにおいが付いたままになっていることに気づいて詠んだ作品。折角の満月が姿を現さないのは期待外れだが、中秋の名月の夜だと思えば、空が雲に覆われているとはいえ、華やぐ心も無くはない。からりと晴れわたって澄んだ月光に照らされているより、気持ちが落ち着くように思う。平成20年作。『春霙』所収。

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