冬薔薇の香の狎れ合はず漱石忌

「漱石忌」は明治の文豪夏目漱石の忌日。1916年(大正5年)12月9日胃潰瘍による出血で死去した。漱石と言えば小説家としての面が偉大だが、大学時代、正岡子規と出会い、俳句を作るようになったことも知られている。

掲句は、細々と咲き続ける冬薔薇のそれぞれが、他と異なる匂いをもつことに気づいたことが契機になってできた一句。漱石は明治の文明開化の世に生きて、社会の中で個々の人がいかに己を生かして自らを全うしていくべきかを考え続けた。他者との関わりの中での個人の生き方は、古くて新しい問題だ。平成22年作。

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