くちなしや昨日の言葉今日は古り

「くちなし」は本州の中部以南に自生する常緑低木で、漢字表記では「梔子」。6、7月、枝先に香りのいい白色の六弁花を咲かせる。

掲句は梅雨の頃真っ白に咲いてたちまち黄ばんでゆく「くちなし」と、古びやすい言葉というものを取り合わせた作品。話し言葉であれ書き言葉であれ、話され書かれた言葉は、その時は新鮮に感じても、一日経つと古びてしまうことが多い。作句の現場であっても事情は同じだ。思い浮かんだ瞬間は手応えがあっても、一日寝かせて読み直してみると、何の感銘も覚えないことの方が多い。言葉という古びやすいものに、永遠の命を吹き込む難しさを日々感じている。令和4年作。

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