「夜の秋」は夏の終り頃、夜になってからの涼しさに何となく秋めいた感じのすることをいう。去りゆく夏に一抹の寂しさを感じる。
掲句は、一読、一人より二人の方が寂しいとはどういうことだろうと、一瞬立ち止まってしまった作品。常識的には一人の方が寂しさを感じると思うのだが、二人で居ることで、却って寂しさを強く感じることもあるのだろう。仮に互いに隔てのない夫婦の仲であっても、ふとそんな思いに捉えられるのが、「夜の秋」ではないだろうか。夜気に秋めいた気配を感じる夏の終わり頃の感慨である。『俳句』2025年8月号。


