月細り虫の音細り母の忌来る

「虫」は秋に鳴く虫の総称。その鳴き声を愛し、楽しむ。立秋の頃から鳴き始めた「虫」も、秋が深まる頃になると、日々鳴き細ってゆく。

私の母の忌日は10月26日。令和元年のこの日自宅で倒れ、その日のうちに病院で死去した。毎年秋が深まる頃になると、母のことが頻りに思い出される。目に浮かぶその面影は、若い頃の母であることもあるし、晩年の母であることもある。折から、毎夜鳴きしきっていたコオロギもいつしか数が減り、声が細くなってくる。未明に東の空に残っている月も日に日に細ってくる。令和6年作。

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