「沖縄忌」は6月23日。太平洋戦争末期、沖縄は日米最後の決戦地になり、多くの民間人が犠牲になった。沖縄の日本軍が壊滅したこの日が慰霊の日とされた。「沖縄忌」は慰霊の日にちなむ忌日季語。
戦後しばらくの間、6月23日の慰霊の日は沖縄県独自の追悼日だったが、1972年の本土復帰以降全国的にも知られるようになった。そして、1980年代以降、「広島忌」「長崎忌」などと同様に戦争の記憶を俳句に留めるべきではないかという機運のもとで、「沖縄忌」が俳句に詠まれ始めた。
沖縄忌海に面した墓ばかり 中村和弘
沖縄忌唇ばかり覚えいる 池田澄子
現在、主要な歳時記では、沖縄戦の戦没者を悼み、平和を祈る忌日季語として掲載されている。「広島忌」などの他の忌日季語と比べると、南国の美しい自然と戦争の惨禍の著しい対照が、独特の詩情を醸し出している。
戦争の記憶を風化させないためにも、今後も詠み続けたい季語である。