「夏料理」といえば、洗膾(あらい)、素麺、冷奴など、夏の食膳にのる伝統的な和食を思い浮かべるが、和・洋・中に関わらない。さっぱりした口当りの、涼しげな一口ものや新鮮な夏野菜をあしらった料理を前にすると、夏という季節のよろしさを実感する。
「麦飯」「鮓」「冷麦」など個別の食材や料理を詠むばかりでなく、季節の料理を丸ごと「夏料理」として詠んだ作品が現れてきた時期はさだかでない。
美しき緑走れり夏料理 星野立子
昭和25年発行の立子の第4句集『笹目』に収められている一句。「夏料理」という季語の定着を決定づけた作品だ。その料理がどんなものなのかを一切省略して、色彩に焦点を絞ったところがいい。従来の句に囚われない大胆な単純化がいい作品を生んだ一例だろう。読者は、皿に盛られた「美しき緑」を各自の好みに従って自由に想像しながらこの句を詠み味わえばいいのだ。
個々の料理を詠むばかりでなく、この季語を用いることにより、季節感や涼感、その場の雰囲気などをより生き生きと感じさせる作品が得られたらいいと思う。