クーラー(エアコン)が一般家庭に普及し始めたのは1970年代から1980年代であり、「冷房」「クーラー」「冷房車」などの言葉が季語として定着したのは1990年代以降とされる。手元の歳時記では、「冷房」が主季語で、「クーラー」「冷房車」等が傍題になっている。暑い室内の温度を下げ暑さを忘れさせてくれる一方で、冷え過ぎて体調が悪くなることもある。
歳時記の例句を見ると、冷房が欠かせなくなった夏の都会生活の機微や、人工的に作り出された冷気に対する違和感を詠む場合が多いようだ。人間が作り出した装置のもたらす恩恵とその限界の両面が、作句の契機になっているのだろう。
近年では「クーラー」というよりも「エアコン」「空調」と呼ばれることが多い。年間を通じて室内の温度や湿度を管理するようになっているからだ。だが、「エアコン」「空調」には夏の季節感は乏しいので、季語になり難いと思われる。