新季語探訪(15)

「山開き」は夏山のシーズンの初めに、その年の登山の安全を祈願して各山で行われる儀式のこと。昔の登山は信仰行事だったので、霊峰には夏季の一定期間以外は登ることを禁じられていた。その禁を解くのが「山開き」。それは古来から卯月八日であることが多かった。一方、現在では、上高地のウェストン祭をはじめ、いずれの山開きも観光・登山シーズンの始まりを告げるイベントとなっている。

「山開き」が季語として句に詠まれるようになったのは江戸時代中期以降とされるが、手元の歳時記に掲載されている例句はいずれも戦後のもの。「山開き」は山岳信仰からスポーツとしての登山シーズンの始まりを告げるイベントに変化したが、例句は山岳信仰の味わいを残しているものが多い。

神官の背を雲這へり山開き 岡田日郎

「山開き」は「祭」「花火」などとともに古くて新しい季語だが、現代的な光景を写し取るだけでなく、山岳に対する敬虔な思いが底流にないと、佳句とはなり難いように思う。


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