花冷ゆる戦艦大和忌日かな 和田知子
この句について、飯田龍太は「忌日としては類例を見ない作品であるが、「花冷ゆる」に亡魂追悼のおもいと、消えがたい作者の悲愁が的確に示されている。この忌、歳時記に登載するしないは別として、例句はこれひとつで十分だろう。」と記す。
戦艦大和が沈んだのは、80年前の昭和20年4月7日。沖縄への海上特攻の途中、南西諸島沖で米軍に撃沈された。太平洋戦争での日本敗戦を決定づける出来事だった。
手元の歳時記には「戦艦大和の忌」は掲載されていないが、掲句以外にも、 海に散るさくら戦艦大和の忌 髙田緑風 など、「花」「桜」と取り合わせての作例が散見される。
「大和」よりヨモツヒラサカスミレサク 川崎展宏 も忘れられない一句。この句には〈戦艦大和(忌日・四月七日)〉と詞書があり、「戦艦大和の忌」の句と言っていいだろう。
「戦艦大和の忌」は歳時記に掲載されていないものの、これまで詠み継がれてきた句の蓄積がある。桜の散る頃改めて思い起こし、時には作句に挑戦してみたいと思う。