象の足もとに鶺鴒日脚伸ぶ 

「日脚伸ぶ」は年も明けて、少しずつ日が長くなること。一年のうちで最も昼が短い冬至を過ぎると、日一日と日照時間が延びて、昼が長くなってくる。1月の半ばを過ぎる頃になると、日没が遅くなったことや昼間の日差しの強さを実感するようになる。一歩ずつ立春が近づいてくる。

掲句は上野の動物園での作品。象の足元のコンクリートの床の上に、食べこぼした餌でも漁ろうとしているのか、一羽の鶺鴒(せきれい)が来てしきりに尾を振っていた。餌をもらいながらゆったりと日々を過ごす象と、その足元をちょこまかと歩き回る剽軽者の鶺鴒の対照に、ある種の趣を感じた。下五の「日脚伸ぶ」に、冬の終りが見えてきて、めっきり昼の時間が延びた頃の、ほっとしたような明るい安堵感が出ていれば幸いだ。平成20年作。『春霙』所収。

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