「凍蝶(いてちょう)」は寒さのため凍てついたようになる蝶のこと。窓辺などで見かけることもあるが、草木に潜んでいることもある。動きは鈍く、ほとんど静止したままだ。
掲句は、眼前のあるかなきかの命を保つ凍蝶から遥か隔たったところに「てのひらほどの」海が輝いている景を詠む。海の光は着実に近づいてくる春を感じさせるものだが、凍蝶と海とは何ら関わりなくそれぞれ存在し続ける。間もなく凍蝶は死に、海はますます光を増してゆくだろう。遠近、明暗の対比により、冬深い頃の厳しい寒さと春を待つ思いが感じられる作品。『俳句四季』2025年3月号。


