鮎は秋に産卵のため河川の下流域に下る。産卵期が近づくと、体色が黒ずんでくる。この時季の鮎を「落鮎」「錆鮎」などといい、秋の季語。「子持鮎」も同時季の鮎を指す。
掲句は店先に並んだ秋の鮎の胸鰭に目をとめてできた作品。夏の間見かけた鮎よりも、胸鰭の草色が色濃く感じられた。生息する川岸の草木の緑が沁みついた色のように思えた。同じ秋の鮎を詠む場合でも、「落鮎」といえば落魄した印象が逃れ難いが、「子持鮎」といえば未来へつながる希望の一筋の光が差してくるような気がする。令和6年作。
kknmsgr
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