新年に神棚に飾って幸福を祈る達磨。関東近辺では正月二日、三日に達磨市が立つところが多く、群馬県の少林山達磨寺の境内の達磨市は正月六日。何かの願いごとがかなったとき、達磨に眼を入れる風習がある。


新年に神棚に飾って幸福を祈る達磨。関東近辺では正月二日、三日に達磨市が立つところが多く、群馬県の少林山達磨寺の境内の達磨市は正月六日。何かの願いごとがかなったとき、達磨に眼を入れる風習がある。


風船がゆく元日の船の上 龍太
「雲母」昭和64年1月号。
「元日」は一年の始めの日。暦の上で新しく年の改まる正月の初日として重視される。「鶏日」ともいう。
掲句は旅吟。青々と晴れわたった元日の船の上を風船が飛んでいく。船客である作者は、船端から仰いで見送っている。「元日」の華やぎと作者の胸の内の淡々とした旅愁の交錯がこの句の味わい。単明な句柄だが、華やぎと旅愁の入り混じった情感が捨てがたい。過去の記憶を呼び覚ましての作品と思われる。
始まったばかりの年のこと。年の始め。新年。枕詞「あらたまの」が「年」にかかることから、「あらたま」だけで「あらたまの年」(年の始め)の意に用いる。歳時記には「新年」の傍題として出ている。

一月二日のこと。現在では元日から開店する店も多いが、以前は二日が仕事始めの吉日とされ、初荷、初湯、掃初、書初などが行事として行われてきた。元日ひっそりしていた街全体が、特に商店街が活気づいてくる。家族とゆっくり過ごす元日に対し、世の中が動き始める日。

鰯雲浮子また水をよろこべり 龍太
「雲母」昭和63年10月号より。
「鰯雲」は鰯の群れのように空に広がる雲。天候の悪化の前兆といわれる。台風や移動性低気圧が近づく秋によく見られ、秋の季語。「浮子」は、当たりを知るために、また餌を所定の深さに置くために釣り糸につける浮標のこと。アバ、ウキ、フシなどと読むが、ここではウキと読みたい。
釣り好きだった龍太には 釣りあげし鮠に水の香初しぐれ 龍太 など釣り絡みの佳句があるが、掲句も釣りの醍醐味を満喫している作者の姿が彷彿する作品だ。川に浮かべている「浮子」も、魚たちや作者の足と同様水をよろこんでいる。既に夏の炎暑は去り、頭上を鰯雲が流れ、爽やかな秋の好季節を迎えている。自然と一体になった作者の釣りの在りようが浮かんでくる。
句集には収められていないが、龍太の子息飯田秀實氏が龍太20句選の中に選んでいる。