魚籠も魚も山独活の香にまみれ 龍太
「雲母」昭和61年5月号。句集未収録。
「山独活」は全国の山野に自生する日本の代表的な山菜であり、春、伸び始めの若い茎を食用とする。栽培もされているが、天然物の香気と歯ざわりは、春の屋外レジャーの醍醐味の一つ。
掲句は自然の中に溶け込んで自然と一体になる作者の釣りの在りようがよく表現されている作品。釣りのついでに摘んだ山独活の香りが辺りを領しているのだ。釣り果など気にせずに、時の経つのも忘れて釣り糸を垂れている作者の姿が見える。
句集『遅速』には収められていないが、作者その人が彷彿するところが捨て難い。