一水に沿うて秋思の歩を延ばす

「秋思」は秋になって、心に何かを感じたり思ったりをすること。春の「春愁」に対して、秋のもの思いが「秋思」。湿り気の少ない漠としたもの思いである。

掲句はひとすじの小さな流れに沿って櫟林の中を歩いたときの作品。傍らの流れや溜まった木の葉に目を遣りながら足を運ぶ。林を抜け出た後、その流れは柳瀬川に合流した。散歩の後になって、「秋思」という季語がその時の私の気持ちに相応しいことに思い至った。特定の愁いや悩みではなく、自らの齢や来し方行く末を巡るとりとめのない思いだった。「郭公」2025年1月号。

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