龍太の句を拾う(20)

寿貞尼は目細きひとか草の花 龍太

「雲母」平成4年1月号。句集『遅速』以後の作。

「草の花」は秋に咲く草々の花のこと。他の季節の花よりもしみじみとした地味な印象がある。

掲句は寿貞尼(じゅていに)の人となりを思い浮かべての作品。寿貞尼は芭蕉が愛した唯一の女性といわれる。 芭蕉と同じ伊賀の出身で、江戸に出た芭蕉を追って彼女も江戸に出てきた。元禄7年7月、故郷伊賀に滞在中の芭蕉は江戸で寿貞尼が死去したことを知る。その時の作〈数ならぬ身となおもひそ玉祭〉には芭蕉の真情があふれている。写真も肖像画も残っていないのだから、作者の想像による外はないのだが、「目細きひとか」の措辞には寿貞尼その人を彷彿させるリアリティがある。芭蕉その人を詠んだものではないが、円熟期の龍太の芭蕉への傾倒を示す作品だ。

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