龍太の句を拾う(15)

鰯雲浮子また水をよろこべり 龍太

「雲母」昭和63年10月号より。

「鰯雲」は鰯の群れのように空に広がる雲。天候の悪化の前兆といわれる。台風や移動性低気圧が近づく秋によく見られ、秋の季語。「浮子」は、当たりを知るために、また餌を所定の深さに置くために釣り糸につける浮標のこと。アバ、ウキ、フシなどと読むが、ここではウキと読みたい。

釣り好きだった龍太には                    釣りあげし鮠に水の香初しぐれ 龍太                      など釣り絡みの佳句があるが、掲句も釣りの醍醐味を満喫している作者の姿が彷彿する作品だ。川に浮かべている「浮子」も、魚たちや作者の足と同様水をよろこんでいる。既に夏の炎暑は去り、頭上を鰯雲が流れ、爽やかな秋の好季節を迎えている。自然と一体になった作者の釣りの在りようが浮かんでくる。

句集には収められていないが、龍太の子息飯田秀實氏が龍太20句選の中に選んでいる。

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