「初雁」はその年の秋初めて見とめ聞きとめた雁のこと。雁は晩秋の頃北方から日本に渡ってくるカモ科の大形の冬鳥。
掲句の「淡海(おうみ)」は現在の滋賀県の旧国名。「近江」とも表記するが、「淡海」とすることによって、真ん中に位置する琵琶湖の風景を眼前にする感がある。掲句は夜琵琶湖に渡ってくる「初雁」の群れを、折りからの月が出迎えていると擬人的に表現した。冷え冷えと静まった月下を整然と列を組んで渡ってくる雁。雁たちは、滴るように澄んだ月夜を乱すことなく、湖に着水する。雁が渡る頃の琵琶湖の月夜を大きく捉えた一句。『俳句四季』2025年1月号。


