鰆(さわら)についての一考察

サバ科の回遊魚。体長は1メートルほどで、体色は銀灰色。出世魚で、関東では50センチくらいまでの大きさを「サゴシ」「サコチ」、50センチを超えると「サワラ」と呼ぶ。一方、関西では50センチ前後は「サゴチ」「ヤナギ」、70センチを超えたものを「サワラ」と呼ぶ。年間を通して日本沿岸で漁獲があるが、晩春・初夏の頃産卵のために瀬戸内海に回遊してくるため、春の季語に分類されている。ただし関東では、脂がのった産卵前の寒鰆が賞味される。

上記のように、鰆は晩春・初夏に産卵のため瀬戸内海に集まり、漁獲量が増えるため、関西では春が旬と認識されてきた。関西では、刺身や西京焼きが好まれ、冠婚葬祭や懐石料理に用いられるなど、身近な魚として浸透している。そのため、歳時記でも春の季語とされている。現在までの歳時記が、関西人の認識や生活感覚を核にして編纂されていることを改めて認識させられる一例だろう。脂ののった冬の鰆については、歳時記には掲載されていないが、「寒鰆(かんさわら)」として詠むのも一法だと思う。


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