雲の峰踝に水流れゐる 龍太
「雲母」平成3年8月号。
掲句は川の浅瀬に立って雲の峰を仰いでいる情景。頭上には雲が真夏の勢力を誇示し、踝(くるぶし)には清冽な川の流れを感じている。具体的に自らの体の中の一部分(踝)に感覚の焦点を定めたところがいい。雲のもつエネルギーと水の涼味が、夏という季節の醍醐味を味わわせてくれる。
雲の峰は龍太が好んで使った季語の一つで、『遅速』にも 看護婦の三つ指遊び雲の峰 龍太 など3句が収められている。これらの句に比べると掲句は平淡な句柄だが、夏の全貌を表していて捨てがたい佳句だと思う。