龍太の句を拾う(6)

今生の色いつはらず寒椿 龍太

「雲母」昭和61年2月号。

「今生(こんじょう)」はこの世に生きている間、この世、現世の意。この句の「寒椿」は目に鮮やかな紅だろう。寒気の中に咲く早咲きの椿の鮮やかさが、作者の心を打った。眼前の「寒椿」だけに対象を絞りその色合いを詠んでいる作品だが、眺めている作者の自らの「今生」への思いも感じられる。自らの半生を振り返り、今後の残された時間を思っているのだ。

この句を句集に収めなかったのは、句集『山の木』所収の昭和48年の作〈偽りのなき香を放ち山の百合 龍太〉が作者の念頭にあったからだろう。詠む対象は異なるが、「偽りのなき」「いつはらず」との措辞の類似を思うとき、後で作られた「寒椿」の句は抹殺すべきと考えたのではないだろうか。

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