「着ぶくれ」は重ね着をしたり、分厚い外套をはおったりして体が膨れて見えること。着ぶくれると動作が鈍くゆっくりになる印象がある。
掲句は平和な世が続いている日本にいて、戦地に思いを馳せた作品。ウクライナやガザ地区など世界では戦争・紛争が絶えず生起している。戦地に立ち会っていない人間にとって、気には懸かるが句に詠むことは難しい素材だ。掲句は、絶えず命や生活を脅かされる戦地と現代日本の「着ぶくれて撃たるることもなき街」を対比して、戦争に対する作者の思いを滲ませた。「着ぶくれ」という平和ボケの日本に相応しい季語がよく効いている。『俳句』2025年1月号。


