積み上げし花卉の空箱秋時雨

晩秋の頃に降ってはすぐに止む雨のこと。華やかな紅葉を散らしてしまう雨なのでどこか侘しい。近づいてくる冬の気配を感じさせる。

掲句は通りすがりの花屋の光景。花屋の店先には、仕入れの箱詰めの花卉(かき)がつぎつぎ届く。晩秋の頃だったので、菊、吾亦紅、竜胆などが箱から取り出されて、店先に並べられていく。空箱がどんどん増えて積み上がる。秋時雨の一抹の侘しさと晩秋の頃の花卉の華やぎには、どこか照応するものがある。平成18年作。『春霙』所収。

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