茸犇めき天上に龍太の目

「茸」は晩秋の頃、山林の湿地や生きた木、朽木、切株などに生える菌類の総称。秋の味覚の代表として焼いたり煮たりして食する茸から、猛毒の茸までその種類は多い。

森の中にはいたるところに茸が生える。切株、風倒木や地面などだけでなく、生きている木の根の辺りにも生える。傘を広げる前の茸の可憐なつむりが、群がる保育園児のようにも見える。ふと、前年2月に亡くなった飯田龍太の眼差しを、木の間の空に感じた。山住みの龍太にとって茸は身近な存在で、〈茸にほへばつつましき故郷あり〉など度々句に詠まれている。平成20年作。『春霙』所収。

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