唐桟の縞の中より葉月来る

「葉月」は陰暦8月の異称。陽暦ではほぼ9月に当たる。暑さも峠を越して、涼しさの感じられる時期である。芒の穂が風にゆれ、稲が実り、中天には澄んだ月が仰がれる。

掲句は川越の蔵町通りを散策したときの作品。銅鉄店や漬物屋などと並んで、唐桟(とうざん)織の着物や柿渋の布地を売る呉服店もあった。唐桟は細かな縦縞模様を特徴とする綿織物の一種で、唐桟織のうち、川越商人が江戸時代後期に扱ったものは川唐(かわとう)と呼ばれる。その青藍の粋なストライプは、雁の渡ってくる頃の季節の色合いのように思えた。平成14年作。『河岸段丘』所収。

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