紅葉かつ散る捨て舟は雨を溜め   

「紅葉かつ散る」(秋季)は木々の葉が紅葉しながら同時に散るさま。「紅葉散る」(冬季)とは別の、秋たけなわのゆったりした時間の流れが感じられる季語。

掲句は春日部市内を流れる古利根川や元荒川の川べりを歩いたときの作品。かつての水運としての役割を終え、ゆったりと流れる川のほとりには、捨て舟とおぼしき古びた舟が係留されたままになっており、舟底の雨水には辺りの桜紅葉が散り込んでいた。今でも「紅葉かつ散る」頃になると、かつての水運の町の秋晴れを堪能したこの日のことが思い起こされる。平成14年作。『河岸段丘』所収。

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